PROJECT STORY
JAPAN
みどりとイノベーションの融合
グラングリーン大阪
うめきたから大阪、関西、
そして世界をリードするまちづくり。
※このページで掲載している全てのイラストは2020年12⽉時点のイメージパースであり、今後変更となる可能性があります。(提供:うめきた2期地区開発事業者)
PROJECT STORY
JAPAN
みどりとイノベーションの融合
うめきたから大阪、関西、
そして世界をリードするまちづくり。
※このページで掲載している全てのイラストは2020年12⽉時点のイメージパースであり、今後変更となる可能性があります。(提供:うめきた2期地区開発事業者)
有本 慎太郎
関西支店 主事
工学部 地球総合工学科 卒
2009年入社
和田 毬奈
関西支店
環境・社会理工学院
土木・環境工学系 都市・環境学コース 修了
2019年入社
※所属、掲載内容は取材当時のものです
和田
「うめきた2期(グラングリーン大阪)」地区の開発はコロナ禍での着工となりましたが、これを境に私たちの検討もハードからソフトの部分、様々な仕組みづくりへとフェーズが移行しつつあります。そこであらためて有本さんにお聞きしたいのが、先行開発区域についてです。「うめきた1期」は、どんな価値を生み出したとお考えですか?
有本
色々ありますが、一つには「人の流れをつくった」ということ。もとは貨物駅のヤードがあった場所で、多くの人が足を踏み入れるような場所ではなかった。そこに『グランフロント大阪』ができたことで、不特定多数の人が訪れるようになった。これにより大阪という都市に洗練された新たな街のイメージや、賑わい・活気、更には人と人との出会いがもたらされたと考えています。
和田
私は生まれも育ちも東京なので、当初は「うめきた」と言われても正直、ピンと来なくて。でも、自分が取り纏めを担当したプレスリリースの対応をしたときも、様々な方からお問い合わせをいただき、多くの人に注目され、期待されているプロジェクトであることを実感しました。「うめきた1期」の成功の要因は、どこにあったのでしょうか?
有本
一つにはエリアマネジメントであり、そこには「三菱地所らしさ」が生きていると私は考えています。前任者たちは行政と粘り強く協議し、公共空間である歩車道や広場でのイベントやオープンカフェを実施できるようにするなど、人が集まれるようにした。そこでは「大丸有」や「みなとみらい」の開発を通じて蓄積してきた当社の知見、ノウハウを総動員していったであろうことは想像がつきます。しかも、これは私自身も実感しているところですが、当社にとって関西エリアでの大規模開発は実績も少ない。そうしたなかで前任者たちは、共同事業者各位の力を借りながら粘り強く合意形成を図り、多彩な賑わい創出が図れるようにした。だからワーカーのみならず、多くの方が「うめきた」を訪れていただけるようになった。私はそう理解しています。
和田
それこそご指摘にあった「大丸有」や「みなとみらい」の実績があったとしても、やはり関西エリアでの大規模開発は、当社にとって難しいですか? 私は入社とともに本プロジェクトにアサインされた経緯もあり、そのあたりの感覚がつかめてなくて。
有本
三菱地所は東京を拠点に、それこそ創業以来の歳月をかけ、中央官庁や地元自治体、そこで生活する人たちとの関係性を構築し、その信頼関係のもとに大規模開発を手がけてきました。しかし、大阪ではうめきた1期で得た信頼が根底にはありつつも、例えば2期特有の領域などについてはそうした関係性を構築している最中の部分もあり、当地の土地柄、地域性に応じた開発や運営の在り方について日々模索しているところです。本計画は、行政を含めて多岐にわたる関係者と連携しながら進める必要があるプロジェクトであり、だからこそ、共同事業者である在阪企業をはじめとした各社の協力が必要不可欠だと感じています。時には、何をするにも合意形成を図っていくことがとても難しいなと感じることもありますが、社外関係者とここまで一緒に考えながら進められるプロジェクトもそうそう無いはずなので、そういった意味では苦しくありつつも面白さも味わいながら仕事を出来ているとも感じます。実は本プロジェクトの推進自体が当社にとっての一つの共創の場なのかもしれないなとは感じます。
和田
共創によるイノベーションの創出。それはまさに「うめきた1期」の系譜を継ぐ本プロジェクトの核心部分でもありますよね。「うめきた2期(グラングリーン大阪)」におけるイノベーション創出の起点となる中核機能は、「うめきた1期」の知的創造拠点としてつくられた「ナレッジキャピタル」との機能連携を図ります。
有本
中核機能としては、1期の「ナレッジキャピタル」で多様な企業同士のコミュニケーションが生み出された部分を、2期では新産業創出へとつなげるべく、より一層官民の連携を強化していく、そのための仕組みをつくっていこうとしています。
有本
ただ、これが実に難しい。パークマネジメント一つとっても、都市公園法という法律があり、大阪市規定の公園条例がある。公園は「誰でも使える公の空間」であり、何でもできるというわけではない一方で、和田さんが解説してくれたように、本プロジェクトのコンセプトである「みどりとイノベーションの融合」を図るためには、従来にはない試みも必要です。だから、色々とアイデアはあっても、それがどこまで実現可能なのか、どうすれば実現できるのか。そこはもう「うめきた1期」担当者たちと同様、行政との協議を密に重ねていくしかありません。
和田
そういった仕組みづくりに向け、『グラングリーン大阪』の中核機能では国などのイノベーション支援機関の入居を想定したオフィスなどから構成される「プラットフォーム施設」と、イノベーション創出を事業とする企業が利用するコワーキングスペースやSOHOなどから構成される「イノベーション施設」が整備される予定です。さらに、敷地の半分を占める約4.5haの都市公園(うめきた公園)を活用し、ここを市民であったり様々な企業などが参加可能な実証実験の場とすることで、企業、行政、市民が三位一体となって、未来につながる創造的・革新的な変化、つまりはイノベーションを生み出していこうというのが、本プロジェクトのビジョンでもあります。そこで有本さんが担当する、パークマネジメントを中心としたエリアマネジメントが重要になってくると。
和田
また、実証実験の場としての仕組みをつくる以前に、公園として快適に過ごしてもらえる仕組みをつくることも必要ですね。私は主にオフィスの計画に携わってきましたが、オフィスのなかだけではない働き方、これからの時代にフィットする新しい働き方というものを提案したいと考えています。オフィスの目前にこれほどの大きな公園があるわけですから、そこを最大限に活用したい。例えば公園で仕事をする「ソトワーク」を促していくような、そんな仕組みをつくれたらと思っています。どちらにしても、持続可能なものとするには「財源の確保」というのが重要なポイントになると、有本さんはおっしゃっていましたね。
有本
従来の都市公園の枠組みを超えるような取り組みには財源も必要です。そこをどう確保していけばいいのか。あらためてソフト部分の仕組みづくりの難しさに頭を悩ませています。また、「ソトワーク」を例にとっても、公園は夏は暑くて、冬は寒い。そこでパラソルや暖房器具、さらには仕事に必要な通信環境を整備したり、色んなソトワーク用のツールなどを貸し出すにしても、そもそも都市公園にそういうものを設置したり占用したりできるのか、どういった費用がかかるのか、また誰がどのように費用負担するのか。この部分だけを切り取っても、大小様々な課題がある。
和田
それでも私たちはコロナ禍によるリモートワークを経験したことで、仕事場をオフィスに限定する必要はないことを知りました。働き方がますます多様化するなかで、それに対応した職場環境をいかに実現するかは企業にとっての経営課題でもあります。加えて言えば、時代はSDGs。サステナビリティ経営は企業にとっての重要テーマであり、その取り組みが自社の市場価値を大きく左右するようになっています。こうしたなかで都市公園を活用した働き方改革や、不特定多数の人が訪れる公園を実証実験の場ととらえたマーケティング活動は、これからの時代に適った企業のあり方を模索し、磨いていけるはず。
有本
つまりオフィスと公園をうまく連動させ、入居される企業のブランディングを可能とするような仕組みを私たちがつくり出せれば、そこで生み出される利益なり価値なりが来街者、ひいては社会へと還元されていくと。そして最終的には、私たちデベロッパーが介在しなくても自走していくような仕組みとなれば、それがもっとも理想的な形ですね。
和田
これまでの共創、イノベーションというのは、ともすれば供給者側のみで生み出そうとしてきました。しかし、公園という場が設けられることで、『グラングリーン大阪』においては需要者側も、そうした取り組みに参加することが可能です。広大な公園を舞台に、企業、行政、そして市民と、様々な人が新しい活動にチャレンジできる。その結果として、活力に満ちた創造的なライフモデル、新しいライフスタイルというものを生み出せるような仕組みがつくれたらと、私も頭を悩ませつつも夢はどんどん膨らんでいます。
有本
冒頭、本プロジェクトは当社にとっても共創によるイノベーション創出の場だと言いましたけど、この開発それ自体が、一つの壮大な社会実験と言えるかも知れません。
和田
同感です。それというのも『グラングリーン大阪』で目指しているライフモデルが、図らずもアフターコロナのライフモデルと重なりはじめていると感じるからです。ステイホームを余儀なくされたことで、多くの人が自分たちのライフスタイルを見つめ直したことについては、東京でも郊外や地方への移住が注目されはじめていることからも明らかです。個人的にも働き方、生活の仕方というのは、もっと自由で多様であっていいと思います。だから「うめきた公園」を中心とした多様なライフスタイルが実現できる本プロジェクトで、そうした可能性を社会に提案できたらと強く思います。
有本
いまの指摘は同時に、三菱地所が大阪の開発を手がける意義とも重なり合う部分ですね。東京一極集中、対する地方の人口流出にともなう衰退は、この国が抱える社会課題の一つでもあり、また国の施策としても地方創生は一つの欠かせない柱にもなっています。そこで当社は、「大丸有」で培った開発を地方の主要都市に展開し、その地域独自の個性に沿った要素をしっかり取り入れ、地元の方ともきちんと関係を構築し、一緒になって新たなものをつくり上げようと動き出しています。空港事業を手がけるのもその一環。こうして各地に「大丸有」のような拠点ができれば、そこを足がかりに郊外での生活が実現され、地方分散の流れも生み出していけるのではないか。そしてオフィスワークとリモートワークを併用することで、都市と郊外、都市と都市の往来が生み出されていけば、地方創生、地域活性化にもつながっていくのではないか。
和田
そのためにも、大阪で進める本プロジェクトでしっかり成果を上げたいですね。関西国際空港を有する日本第2の都市に相応しく、スーパーラグジュアリーホテルや国際会議も開ける「MICE施設」も用意するなど、『グラングリーン大阪』も多様な用途、機能を誇る内容となっており、共同事業者と共に新たな仕組みづくりにチャレンジしています。せっかく共同事業者9社がワンチームでプロジェクトに取り組むという、当社にとっても希有な環境下で仕事ができているのですから、私としてはこうした異文化交流を糧に、世界にアピールしていけるような新たなライフモデルを、本プロジェクトに関わるすべての人たち、開業後『グラングリーン大阪』にいらっしゃる方も含めて、みんなで生み出していきたい。
有本
そうですね。本プロジェクトによって新たに「うめきた(大阪)地下駅」が開設され、関西国際空港からのアクセスも飛躍的に向上します。2025年には「大阪万博」も開かれる予定だし、その頃にはコロナも終息しているでしょう。街の利用者にとってのユーザビリティ向上や施設管理の効率化、更にはエリアマネジメントの観点からも、データ連携をはじめICT技術を街としてどう活用すべきかといった検討を重ねているところですが、ほかにも色々なプログラムを用意することで、和田さんが言うように世界へ発信、リードできる街にしていきたいですよね。短期的な視点ではなく、中長期的なスパンで開発を考えていくことが、三菱地所の真骨頂でもあるわけだし。
和田
そうやって多様性を受け入れ、知恵を分かち合い、それぞれのQuality of Lifeの向上を実感できる社会を構築するための起点になっていくこと。目指すべきはそこですね。
※所属、掲載内容は取材当時のものです